リターン

 常陸太田から一路東京のアパートまで戻ってくる。激走って感じ。あちらの家に一泊してきたのだ。ありがとう。そんでもって常陸太田を出たときは雪がちらついていたのだが、栃木は晴れ。東京も晴れ。大移動の醍醐味を味わったりして。

 よくわからんが、忙しい。あれやこれやで日が暮れる。こういうとき、カメダさんを思い出す。映写室でいっしょだった人。いつも「暇だー」とだるそうに言っていた。それなのに働くのはいやで、16時を過ぎるとそわそわし始め、16時半には帰ってしまう。たとえ映写業務が忙しくても。
「なんか面白れえことねえか」
 そういつも訊かれた。暇なあんたのほうが楽しいことあるんじゃないのか、と言いたかったが言わなかった。一応先輩だし、年上だし。大学院に通いながら、映画館と家庭教師の掛け持ちをやっていた頃なんて、本当にハードでつらかったのに、向こうには楽しそうに見えたらしい。
 やるべきことがあるっていいことなのかもしれない。趣味が人生を豊かにするなんて、いままでまったく実感がなかったけれど(かなり中年的発言だもんね)、本当かもしれない。
「なんか面白れえことねえか」
 カメちんはまだいまも誰かにそう訊いているのかなあ。