良性

 うちの犬の腫瘍、良性だった。よかった、よかった。これから年齢的にいろんなものを抱えていくのだろう。おかしな話かもしれないけれど、うちの犬はいい生活をしているので、たとえいつ逝っても後悔はしないと思う。うちの先代の犬は、あまりかわいがってやれなかった。ただただ飼っていた。どこかに連れて行ってやることもしなかった。そういう飼い方を知らなかったんだな、親も知らなかったし。うちの両親は楽しむってことを知らない人たちだったから。特に若いころは。「お金が無え」「つまんねー」「面白いことないかなー」と休日ともなると寝たままそんな感じだった。
 
 ま、うちの母は子育てが終わり、友達と遊ぶようになり、いまは羽が生えたように休日となると家にいないけれどね。金を貯められない父のもとに嫁いで貧乏生活を強いられて、ひーひー言いながら働いた日々が終わってよかったと思う。母の家は女性は働かない。祖母もおばたちも、いとこも女性は働いていない。うちの母だけだ。スナックだとか、内職だとかで、必死にしのいでいたのは。