暴念会

 例の忘年会に行った。フツーの忘年会だった。これといって面白いことも、いやなこともなく。

 なのに、なんで彼はあんなに楽しみにしていたんだろう。しかも本人は下戸だからまったくアルコールは飲まないのだ。それなのに忘年会を開催することに異様な執念をみせる。よくわからん。まあ、いろいろとツッコミどころはあるんだけれど。まず、迎えに来た彼は10人乗りの<a href="http://toyota.jp/sp/oreryu/grandprix/index.html">ハイエース</a>でやってきた。ばかみたいに大きくて、マイクロバスみたいなもんだった。
「どうしたのこれ? 今日のために借りてきたの?」
「いや、自家用だよ」
「…………」
 車に乗ってからは、ちょくちょく電話がかかってくる。ほかの忘年会の誘いらしい。バッティングしている忘年会もあったとか。で、それからはいかに自分が多くのところから誘われているかのアピール。慕われちゃっている俺という自慢がきつかった。

 飲み会の途中は人に飲ませまくる。自分は飲まないくせに。ときどきは腕組みをして集まったメンバーを眺めて満足げ。自分はこれだけの面子を集められるんだぜ、という満足感に浸っていた。ま、おそろしくフツーの飲み会なんだけれど。作家も呼べちゃう俺を感じた。で、ひとかどの人物となった同級生がこられないことに不満。偉くなってしまった彼は黙殺。大嫌いな人が多いのだ。思い出話で懐かしんでいる時に、「あ、俺、あいつ大嫌い」というのはやめてくれ。

 最後に車で送ってもらって、ふたりきりになったときに彼が言う。
「俺、この日がいちばん楽しみなんだよね」
 スタッフとして参加した夏の野外ライブがいちばん楽しみと言っていたはずんなんだけど。

 ま、切なくなったよ。もしあのなんてことない忘年会が一年のうちでいちばん楽しみなら。むー、これはうまくいえないな。なあ、おれたちはまだまだもっと楽しめるはずだぜ。くるりも歌っていた。今度会うときは思い出話はやめようぜって。