風邪っぴき

 風邪っぴきでうだうだしている。そのあいだ読書。朝井君のデビュー作をやっと読む。西川美和さんの『きのうの神さま』と今村夏子さんの『こちらあみ子』も。映画監督である西川さんがどんな文章を書くのだろうと興味本位で読んでみたのだけれど、本当に上手な方だった。脚本家としてやられてきた方なので構成はもちろんいい。脚本家の経験が小説を書くうえで枷になるだろうとも思っていたのだけれど、これもない。ちゃんと小説だった。『こちらあみ子』はすばらしかった。エピソードをまるで見てきたかのようにきちんと描き、並べてみせる手腕は、本当に初めて書いた小説なのだろうかと疑いたくなるくらいだ。ぼくは最近、売り物としての小説のカタチに縛られすぎていたのかもしれない。もちろん、売れたほうがいいのだろうけれど、過不足なく書いて、喉ごしのいいお話を作って、書けた気がしてしまっていた。読み手を意識したら急につまらなくなったブログみたいな。