っても困る

 以前、知り合った作家さんと会う。新人賞をもらってデビューしたものの、いまは依頼がなくて書いてもいないという。一時期いくつかの出版社さんと繋がりがあって、たくさん要求を出され、応えようとしていたら倒れたそうな。会社員を続けながら書いていて、無理がたたったとか。で、書かなくなったいま、つながりが途切れないように必死になっていたときのつらさから解放されて楽になったという。
「これからぼくどうしたらいいんでしょうかねえ」
「うーん……」
 
 ぼくの場合、本当にツイていた。いいところからデビューさせてもらったし、ほかに賞をもらったり、サポートがあったり。
 彼はずっと運の話をしていた。聞いているとなんか違うなと思うのだが、自分のことを語ろうとするとやはり運という言葉を使いたくなる。

 また公募で再デビューという道はどうかといった話になる。こればっかりは本人のやる気しだいだからなあ。やりたいからにはなんだってやらなくちゃと思うけれど。ぼくだって続けたいからなんだってやるだろうし。