合併

 うちの町から今年も小学校で講師やってくれと。結局町から著名人がどっさり出るわけじゃないからさ、講師を頼む人もネタ切れでさ、しかたなしにまたぼくを担ぎ出そうってのが見え見えでいやになる。町役場の人たちもきっと「またあの人に頼めばいいんじゃないすか、この際」って雰囲気なのだろう。伝わってくるもの。でもって地元出身だから使い勝手がいいと思っているふしもあるみたいだな。おらとこの町から出た人だから、という感じ。

 もともと郷土愛に溢れた人間ではない。けど、まさかこんなに地元が苦手になるとは思わなかったなあ。本なんて書いていなければこんな考えに陥らなかっただろう。

 あと地元の友達も苦手になってしまった。中学や高校でいっしょだったやつらって、どこか面白くなさそうなんだよな。ぼくにはいつまでも、ダメ出しを出す対象であって欲しかったみたい。別にぼくなんて来年もちゃんと仕事やっていけるかどうか怪しいものなのに、彼らにしてみれば「お偉くなっちまって」なんだもの。「だーかーら、おまえはダメなんだよ」「おまえができるってことはけっこう余裕なんじゃね?」なんて以前みたいに下に見ていたいのに、それをするとやっかみになりかねないジレンマ。そんなものが見え隠れしてヤになる。

 うちのまちはいま合併協議の真っ最中。合併したら講師の話もなくなるだろう。今年が最後かもしれない。という気持ちで受けてしまった。もし合併したら住民票も東京に移そう。