歌詞

 例のシンガーソングライターさんと、歌詞をいっしょに考えてみた。曲はできるけれど歌詞がつかない、というのは言葉ありきでやっているぼくとしては考えられなかった。言いたいことがあるから歌ができるんじゃなくて、メロディーがあってそこに言葉を持ってくるわけなんだな。テレビドラマなどでバンドでメインで作詞しているやつが、歌詞が思いつかなくてアルバム曲がまとまらない、なんてシーンがある。本当なんだろう。ぼくなんて言いたいことだらけだ。時には見咎められるような感情や価値観を、毒を含めたままドバっと出したい衝動がある。それを物語でくるんで世間に出すから咎められないだけで、けっこう心暗いこともたくさん文字としてばら撒いている。あれを端的に歌詞として衝動のままに、もちろん幸せな高ぶりでもいいんだけどさ、メロディーに載せて出せるなんて羨ましいじゃないか。物語にくるむなんて、まどろっこしいんだ、本当は。西田敏行の「もしもピアノが弾けたなら」を思い出す。

  思いのすべてを歌にして
  きみに伝えることだろう

 言葉があって、メロディーがないのが普通だと思っていたよ。「伝える言葉が残される」もんだって。ちなみにこの曲はB面だったそうな。