『きいろいゾウ』

 電車に乗るときに文庫がないと手持ち無沙汰というか不安なので、『きいろいゾウ』を買って読んでみた。そうかー、そうかー。自由でいいねえ。

 今回帰省したときに、どういう本が書きたいかとまず目標とした三冊の本のうちの一冊を久々に読んだ。そのうちの一節に「むしょうに、ぼくは現実的でないもの、遠い世界のもの、心ときめくもの、しかも嘘偽りのないものの中にひたり込んで行きたくなったのだった」とあった。たぶん、原点なんじゃないかと思う。

 井岡の試合、強打を体でもって体験すると踏みこめなくなるもんなんだな、と。特にあのアッパーで手が出なくなった。出さなきゃ負けるとわかっているのに、出なくなってしまう。そういう恐怖ってスポーツをやっていない自分にはちょいとわからなくて、でも本当に怖いんだろうなと考えたり。そのうえで状況を打開するためにパンチを振るっていかなきゃならないことを、これから経験で積んでいくんだろうな。三分という限られた時間の中で、計算ずくじゃいかない展開に持ち込むために、がちゃがちゃとしたボクシングをする。きっと人生でもそういう瞬間ってあると思うんだけどね。計算してしまうとどう考えても駄目なんだが、足掻いて引っ繰り返してしまえ、と。