ちょっと気持ちの谷に落ちている。山も谷もあまりない人間と自認しているのだが、ときどきはあるらしい。だって久々に夜眠れなかったもの。ぼくが夜眠れないなんて、五年に一回あるかないか。普段は布団に入って三分で寝てしまう。五分かからない。というか早く寝すぎて困る。布団に入ってからプロット練ろうかな、なんて自分に言い訳しつつ布団に入るわけだが、瞬時に寝てしまう……。

 眠れないといった経験がないので、眠れなかった覚えといったものは良く記憶に残っている。いちばん覚えているのは大学生のとき。あまりにも眠れないので夜中に車でドライブに出かけた。花巻まで行き、駄目だったので今度は北上して玉山村。そんな感じでうろうろしているうちに夜が明けた。夏だったから日の出は早かった。
 どうしても眠れないので最終的に(なぜか)学校へ行き、洗心亭の前に車を止めて後部座席で寝た。もちろんすぐには眠れず、ただ倒れていた。で、なんとか眠れたと思ったら午前十時になっていた。

 眠れないといった状況に慣れていないから、不眠慣れしている人間よりも七転八倒する。まあ、つぎは五年後くらいかなあ。ある意味、幸せな人間だとはわかっている。