金。

 火曜日が納車日なうえにいろいろと用が入ったので実家に犬を連れていった。お金を下ろしておこうと銀行に寄り、駐車場から出ようとしたら、車をぶつけられた。先に県道に出ようとしていたオバチャンの車が、後ろを見ないでいきなりバックしてきたのだ。
 車から降りてきたオバチャンは、気が動転しているのか意味不明の笑顔。どう切り出したらいいかわからず緊張して、愛想笑いを浮かべるしかなかったのだろう。
「ああ、別にいいですよ」とぼく。
「この車、今日までなんです。明日新しい車が来るんです」
 車をぶつけられたのに、笑顔で送り出したのは生まれて初めてだったよ。