『ホリー・ガーデン』

 五島列島へ行ってきた。奈留島福江島。もともと東村山のワンコつながりで、ぼくよりひとつ年上の女性の方が半年前に島へ帰り、会いに行ってきたのだった。高校卒業と同時に東京へ出てきて、結婚して、離婚して、島へ帰っていく。そういう気持ち、いろいろと聞かせてもらった。何度も浮気されて、それで離婚して、残ったのは犬だけ。そして犬も去年亡くなった。うちの犬はその亡くなった犬のことを大好きだった。

 ぼくはもともと旅行は興味なかった。二十代も、三十代も、別に行きたいところなどなかった。誰かと出かけるのは楽しい。だけど、一人旅ってやつに面白味を感じなかったんだな。よくよく考えてみれば、いまもそうかも。女子で「あそこ行ってみたい!」「あの景色が見てみたい!」と目をキラキラさせているタイプは苦手なくらいだ。だっていまの生活楽しいもん。どこかに行かなくてもやりたいことありすぎるし、読みたい本も観たい映画もたくさんある。一人旅に行っている場合じゃない。
 ただ、歳をとってきたら、ひとりで遠くへ行く理由が生まれてきた。今回の五島列島のように、出会った人が遠くへ行ってしまい、それに会いに行くという理由だ。東京で出会った人が、仕事をやめて香川に帰った。あるいはダンナの転勤とともに金沢へ引っ越した。そんなふうに遠く行ってしまう。また、大学や大学院で出会った人たちも、もはや遠いところに住んでいることが多い。みんなどんどん遠くなってしまう。それに会いに行く。たぶん、自由業で、結婚もしておらず、パートナーもいないぼくじゃないと、こうしてふらふらと会いに行ったりできないんだろう。

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 江國さんの『ホリー・ガーデン』を読む。ネットの感想を見ると、軒並み悪い。けど、ぼくの知り合いの子は愛してやまないと言う。ネットでも「お守りのような本だ」とまで言う人がいる。