『風立ちぬ』

 宮崎駿風立ちぬ』は、いい映画だった。世間では評価が真っ二つらしい。ジブリをディズニーみたいに考えている人たちは、ファンタジーが見たかったんだろう。今作は大人の映画だ。庵野さんから「宮さんはパンツを脱がない」と批判されていたけれど、今回は脱いでいる。そういう性的なものをあの監督の作品から見たくなかったんだろう。それにしても自分の期待と違うものを見せられたからといって、ネットなどで罵詈雑言を並べる人たちの多いこと、多いこと。「見る人のことなんてまったく考えていない映画でした。最低でした」って、あんた、そんなはずないだろう。そもそもどんな映画かなんてさんざんテレビでもネットでも紙媒体でも宣伝してるんだからさ。しかも手ひどく書いているのはたいてい試写会で見た人たち。人間ってさ、お金を払ったものにたいしては、少しでもいいもんだった、と思いたくて補正かけているんだろうけれど、ただの人はたちが悪いわな。

 映画といえば『嘆きのピエタ』は凄かった。誰にもオススメできないし、これがいいなんて言ったら変な人と思われるかもしれないけれど、業の深いものを作品としてポーンと出してくることは、もう日本の映画界ではないことだと思う。最深部が頂点になる、と言ったら矛盾なんだけれど、いい作品にはそういう構造があると思う。また、とにかく痛々しかった。精神的にも肉体的にも。

 話はとんと変わるけれど、今年の新日本プロレスのG1クライマックスの優勝者は、中邑真輔と予想している。オカダカズチカの大プッシュが終わり、じゃあ、ここで棚橋が戻ってきても面白くない。内藤はまだまだ。きっとオカダが決勝まで行く。その相手はもう一順してしまっている。では、新鮮なカードとして残っているのは誰か。中邑だ。どうでしょう。

 その決勝を同じ新人賞の後輩さんふたりと観戦に行くのだけれど、そのひとりの方が書いた受賞作を送ってもらった。ありがとうございます。面白かった。やっぱり新人賞は企みに満ちたものがいいよなあ。きっと読後誰もが「アヒルと鴨の〜」を思い出すだろうが、伏線回収モノとして優れているんだし、あとはテイストと着地点を変えればずっと書いていける人なんだろうなあ、と。ぼくにはない才能だなあ。むー。