三高

 月に一度、写真教室に通っているんだけれど、ひとつ年上で盛岡三高出身の女性がいる。大学から東京に出てきたんだったかな。教室は撮った写真をプリントして持っていくんだけど、その人が盛岡市立図書館の玄関口の写真を提出していた。
「これ、市立図書館ですよね」
 聞いたらやっぱりそうだった。忘れないもんなんだな。
 最近はほぼ二ヶ月にいっぺん四国へ。そろそろ北に行きたくなってきた。最後に東北へ行ったのはいつだったっけ。盛岡に行ったのも講演会だったからプライベートではなかったな。

 ぼくには悪いクセがあって、人とつながろうとしない。出版社の人とも書店員も書評家も避けているほうだと思う。なにせ出版社の担当さんの名前が覚えられない。いっしょに仕事をした人であっても名前が浮かんでこない。なんなんだろうな、この消極的な感じ。中学のときからそうだったかも。みんなぼくがどの高校に行ったのか知らなかった。大学も。大学のあとも。大学院のあとも。まあ、人生にもいいときと悪いときがあって、落ちているときは連絡をしたくないわけだ。でも、いいときだけ連絡をするってのも薄っぺらな気がする。その波に自分でも疲れて、気を使ってもらうのも悪くて、だったら最初からつながらないと思ってしまうのかも。
 面白いことに周期はだいたい四年。四年たつとまたよくなる。なんていうかどうしても潜伏期間がある。

 つながらないという不義理な期間のうちに、不都合なことも出てくる。友達だった人の消息がつかめない。何年か前にカシマから「沢田のことはびっくりしました」というようなことが年賀状に書いてあった。なにがあったのか手紙を送ったけれど返事はなかった。大学時代の友達はみんなごっそり東北にいる。遠くなってしまった。そんなことを三高出身のその人と話していると思ったのだった。