たぶん

 たぶんなんだけど、自分のしている仕事のせいで自己承認欲求ってのはそこそこ満たされているんじゃないかな、と。もちろん、もっともっとと頑張っている作家はたくさんいて、その姿勢をとやかく言うつもりはないんだけれど、ぼくはもうそこにはいなくて、とにかく技術的に上達したいとか、いい仕事をしたいとか、そういうふうに気持ちが向いてしまっている気がする。

 えーと、なにが言いたいかと言うと、世の中のSNSにおいてみんな自説を述べやすくなったのはいいけれど、垣根が低くなった分、どうでもいいようなことに多くの人が賛同したりしているのを見ると、薄気味悪くなる。みんな自分の名のもとになにかを主張して、認められたいんだなあ、と白々しくもなる。ぼくは褒め合いが嫌い。変な賞賛も嫌い。そういうことをしている人たちは急に攻撃をしたりもする。今回、ISにふたりの日本人が殺されたときも、そういうすぐに声を上げる人たちのほうが奇妙なことを言い出した。そもそも、大きな事件が起きたときにやっとその人物の奇異な部分が見えたりするんだけど、ぼくはなるべく声を上げたくないんだ。いいことでも、悪いことでも。自分の中でちゃんと消化してから、もしも問われたら答えようと思う。脊髄反射的に声を上げ、簡単に他人の怒りに乗るような人たちの輪には連なりたくない。賞賛もいっしょ。脊髄反射的に賞賛し、手放しで褒め称える人たち。違うんじゃないかな、と思う。でも、みんな声を上げたいんだろうな。自分の名のもとに。