イメージ集め

 書いているもののために、同じようなジャンルの小説、漫画、映画、ドラマ、歌なんかを集中的に見たり聴いたりすることがある。今回、マンガと小説と映画を一日で消化してみたけれどどれも違った。読み散らかしてぐったり。

 危惧するのはさ、些細なことに引っかかりを覚えなくなったことだよな。大人になってしまったために苦手な人間とも適当な会話でその場をしのげてしまう。いい雰囲気のまま自分もいやな思いをしないでさようならができてしまう。嫌いな人間に対してもクソミソに言わなくても自分を納得させられてしまう。

 若い頃はそうはいかなかった。ちょっとしたことに引っかかり、うまく対応できなかったり、のちのちまで引きずって眠りに就けなかったり。いまはあっという間に寝られるよ。

 たとえばさ、高松の池のところにあった銭湯に行ってその隣にコインランドリーがあって、そこで藤田君やうえがきと会うとなんか気まずかった。みんなといっしょのときはいい。でも、一対一だと妙に逃げ場がないような、会話に詰まるような感覚があって、話題も選んでみるんだけれどスイングしなかったりしてさ。こっちが気を使って勝手に苦笑いばかりしていた。二十歳前後なんて声のでかい人のほうが意見が通りやすくてさ、言ったもん勝ちのところもあった。ま、こっちも言わないとやられる一方なので言いたいことだけ言うというズボラさを身につけていったけどさ。だって言ったもん勝ちなんだもん、本当に。

 つうことで、言ったほうがいいのかな、言わないほうがいいのかな、言ってしまってしまったな、言わなきゃよかったな、なんて悩むことが少なくなって、でもフィクションでそういったものがないのはよくないわけでさ。あとは言うべきかどうかなんて窮地から遠ざかった穏やかな生活を遅れている証拠でもあるのかもしれないけれど。いやじゃん、舌禍ばかりの人生なんて。