帝国ホテル

金曜日は帝国ホテルでパーティーだった。もうデビューして十年以上が経ち、何度も行っているので緊張もしない。初めて来た人をスマートに案内すらできる。なんだか自分じゃないみたいだ、なんて思う。自営業なうえに同業者がそばにいないので、みんな悩みながら過ごしている。今回も三次会で後輩の歴史小説家くんが「プロってなんなんすかねえ」とみんなに聞いて回っていた。自問自答しながら暮らしていて、一年に一度のパーティーの日に集ったときにみんなに質問してみたいのだろう。

一応、ツイッターなどがあるせいで2000年くらいの頃にくらべれば同業者がどんな日々を送っているかはわかるようになった。ぼくがデビューした頃はネットもろくに普及していなくてブログという言葉がやっと日本にやってきたくらい。ネット上でなにかを発信するならホームページビルダーを使ったり、掲示板に出入りしたり。

ヤフーの掲示板での小説家のスレッドに出入りしていたとき、何人かプロがいた。小説推理新人賞をとった人、のちに江戸川乱歩賞をとった人、いまも歴史小説家として仕事されている女性作家などなど。炎上なんてなかったからもっと自由にコメントを書きあっていた。いつのまに世の中はサーチ&デストロイみたくなっちまったんだろう。

今年の新人賞は2000年生まれの16歳。高校二年生。すごいことだ。イケメンだし、ユーチューブにジャグリングの動画を上げているそうな。高校は京都大学へ送り込むような進学校。やっかみはすごいだろうな。けれど如才ない感じで大丈夫なようにも見えた。ただ、彼が同じ新人賞のパーティーでいっしょに酒を酌み交わせるようになるまで四年もあるんだよ。