高松の池

 2日目はレンタサイクルで街中を散策した。大通りを抜け、県民会館へ。知り合いのイラストレーターさんがブータン展のコーディネートをやっていて、せっかく盛岡で開催しているので寄ってみた。県民会館の地下なんてウエガキの書道展以来だ。その後、中津川を渡ったところにある「ひめくり」へ。おしゃれな雑貨屋さん。こちらは知り合いの版画家さんが商品を納めているので覗いて見た。

 那須川の自分が住んでいたアパートの前にも行った。あのあたりはまったく変わっていない。この二十年、時が止まったかのようだった。バイトしていた児童館へ抜ける。モリさんのアパートへ遊びに行ったことを思い出す。銀行員として働いていた頃で、五十万くらいの羽毛布団を買ったのだと見せてもらった。学生のぼくでも騙されたんじゃないかと思ったけど言えなかった。モリさん自身がとてもうれしそうだったから。

 上田通りを抜けようとしたら雪がボサボサと降ってきてコンビニで休憩。病院のそばにローソンやセブンができている。おしゃれな女子が歩いている。全然違う街になってしまったな、とこのあたりに関しては思った。カレー屋のナインもないし、さわも閉店している。なにより鳥信がない。学生はいまどこで集うのだろう。わざわざ大通り方面へ出るのだろうか。
 学生のときはサワダのアパートもあってよくあのあたりをふらふらしていた。金もないのに「よし、飲むか」と繰り出した。フジヒラさんがセイコを抱っこして走ったのは何歳のときだったのだろう。そんなことをしてもまだまだ許される年齢だったはずだ。

 高松の池に行ったら、盛岡女子高が共学化されて名前が変わっていた。何年か前に講演会で訪れたときはまだ女子高だったのに。池は氷が張っていて白鳥と鴨がたくさんいた。初めて五十円でパンの耳を買い、白鳥にやってみた。今回の盛岡行きで実は高松の池に行ければもうそれでいいと思っていた。久々に冬の池が見たかったのだ。池の周囲をジョギングしていたころが懐かしい。フジタ君を誘って走ったこともある。あのころ、フジタ君は狙っている女子がいろいろいていま思い返せば探りを入れる質問をあれこれとしてきた。

 あのころのことを振り返る人間はいまどのくらいいるのだろう。モリさんやウエガキやフタエちゃんは思い返したりするのだろうか。