沖縄

 先週四泊五日で初めて沖縄へ行った。昨年の十月に同い年の知り合いの女の子が沖縄から六十キロ離れた離島に、村おこし的な仕事で赴任し、しかも四か月でその島の人と結婚し、「行ってみたいんですよねえ」と出版社の担当さんにつぶやいたら連れていってくれることとなった。なんても言ってみるもんだな。

 離島には一泊二日。本来はフェリーで行くんだけど点検のため欠航。ゆえにヘリタクシーで。乗り合いのうえに助成金が出ているとかなんとかで、ぼくを含めて担当さんの三人で二万円を切っていた。本来なら十万円を超えるらしい。初の沖縄に、初の離島に、初のヘリ。七百人しかいない島は自転車で端から端まで走っても三十分。なかなか楽しかった。なにより海がきれいで。もう泳げるんだな。

 そのほかの日は本島で。美ら海水族館へ行ったり、首里城へ行ったり。沖縄は酒飲みには楽しい街だ。食事がもうそのようなテイスト。知人の旦那さんが那覇でコーヒーショップを開店して、そこへも行ってきた。足を延ばせば久々に会える人が沖縄にもいる。不思議な感覚。

 実を言えばいまだにもう小説を書くのがいやになっていて、でも、出版社の人たちと旅に出かけ、小説の話をしていると、また書いてもいいかな、なんてことは考える。おとといは実家の県の国語教師七十人を前にして講演会をやってきた。地元出身の小説家という肩書きで呼ばれたわけだ。今週は三月に出した文庫のインタビュー受ける。世間的にそういう人間だっていうふうに外堀を埋められていけば、また書くようになるのだろうか。

 書きたいか、書きたくないか、だったら書きたいのだけれど、それを仕事としてお金をもらうことにはうんざりしてる。クソみたいな連中と仕事をしなくちゃならないから。だったら無理に飯のタネにしないでバイトでもしながら、業過の隅っこでときどき書かせてもらえばそれでいいんじゃないか、なんて気楽に考えたりもする。きっとみんなそんな考えは甘いと一笑に付されるのだろうけれど。

 まあ、もともと売れたいとか、肩書きが欲しいとか、そういうところとは違う次元でやっていたで、またただひとりでシコシコと書いているのが楽しいという状態に戻れればそれでいいのですよ。